電車の中で興奮された原因は?

Tシャツとスリムな長ズボンという格好で、ちょっと空いている電車に乗っていたある男性の話。

むかしむかし、暑い盛りのある日のこと。JR高崎線の車内は混んではいなかったが席は塞がっていたので、彼は立って窓の外を見ていた。すると後ろに、見知らぬ背の高い男性が張り付いて、何やら「いたずらのようなこと」を始めた。

首をちょっとかがめて、こちらの耳元に息を吐きかけたり、腰に手を添えて軽くなぞってきたり。

「ハァ…。ハァ…ハァ…」

妙な呼吸音が聞こえる!

受け側が鈍感であることも手伝って、はじめは気にしていなかった。車内が少し混んできたのかもしれない、と心の中で解釈しながら窓の外を見続けた。ところがだんだん「行為」が露骨になって、不審なその男は体全体を、相手の背中と尻に押しつけるようにもたれかかるようになった。

耳元で吐き出される生暖かい息は、相手のうなじに浴びせかけるように興奮の色を帯びている。

不審な手つきが、背中から尻、尻の下の方に軽くなぞるように滑り落ちていく。腰全体を軽くなで回そうとするので、居心地の悪さを感じた受け側の男は、ちょっと体勢を変えてその攻撃をかわす。

一体何事だ、何だこいつは、と思わずにはいられない。もしやポケットの財布を狙っているのか、と思い手で財布を押さえたら、今度はその腕に軽く手を添えてきた。どうやら財布が目当てではないようだが、軽くとはいえ男の腕にさすられるように触れられると気色悪い。

我慢していた受け側の男が、背後の不埒な男を力強く払いのけ、逃れようと体をよじったとき、電車が速度を落とし駅に滑り込みを始めた。なんだやっぱり車内は空いたままじゃないか。こんなにくっつく理由はないはずだ。

ワケの分からない思いをした彼は降りるとき、不審男の顔を軽く睨みつけて反応を見てから、ゆっくりとホームに降りていった。

その不審な男は二十代前半から後半くらい、身長は180センチくらい、服装は白っぽいシャツに黒っぽいスラックス、黒髪で真面目そうな風貌をしており、整った顔立ちをしていた。体格はややがっしりめで、見た目は真面目なサラリーマンか、ややイケメン青年という感じだが、モテそうと言えるほど今風のかっこよさはない。

不審な男はこちらの表情を見るとばつの悪そうな顔をして、頭に手をやってかるくそこを乱すようにかきむしって、しかめ面をして横を向いた。首を傾げて、さてどうしようかなあと考えるような仕草を見せたあと、ついに反対側を向いてしまった。


長らく理由が不明だったんですが、あれは「ホモの痴漢」だったんじゃないかという一つの予想が浮かんできました。

だけど男性の同性愛者というのは、ガタイのイイ男や、顔立ちの濃い男を選ぶのだと思っておりました。私はこれらの条件に合致しないので、ホモ説には確信を持てずにおります。

じゃあ女性と間違えられ「普通に痴漢」されたのだろうか。しばらく髪を切らずにいたので、伸び放題になって困っていた当時のこと、痩せ形の私なら女性と間違えられるかも……と。そうも考えたのですが、家族に否定されました。「お前の後ろ姿を見て女と間違える男はいない」と。はぁ、そうでござんすか。

じゃああの男、ワシの何が目当てだったんだ。変態にも色々いる。世の中わからないことだらけ。