猫より赤ん坊

赤ん坊

アニメ「サザエさん」のイクラちゃんのように、「バー、ブー、ハーイ」とだけ喋るのが赤ん坊だと思ったら大間違いである。むしろイクラちゃんは変種といっていい。

赤ん坊は腹を空かせた野獣だ。機嫌を損ねてしまうと、耳をつんざく泣き声が家中にこだまするので私は、赤ん坊のご機嫌をとるべく研鑽を重ねている。

ドレミファソラシドを3オクターブくらい切り替えながら、どの音階でどんな風に喋るのが心地いいのかと、あの手この手で実験を繰り返すのだ。いい年こいた男が時に重厚に絞り、時に奇声を上げるその様は、端から見れば変態だが、まあ家の中のことだし近所に聞こえなければ大丈夫だろう。

と思ったが、近所に家の中の声がよく聞こえることが発覚して(夏だから窓を開けっ放しなのだ)、赤面しながら「あやや〜、かわいいでちゅね〜」という感じのノリで戦っている。

ある意味、人間の赤ん坊という奴はネコ以上に気分屋である。ネコなら放置しても勝手に生きている感じがするのに、人間の方はちょっとでも放置するといろいろなものが切れて大変なことになる。一分でも目を離すことは避けたい(目を離さない役目は、我が家では主に女性の役目だが……、掃除や料理などの“とばっちり”は男性に来る。協力しなければならない)。

というわけで、飼っている猫の存在を家族が忘れてしまい、今ではエサをやり忘れる始末。それくらい赤ん坊にかかりきりになっている。

この野獣を、同時に何人も育てるご家庭には神の光が差し込んでいるといっていい。家庭を維持するカカア達のバイタリティに愛の手を。


少子化の理由は案外、簡単なところにあるのかもしれないと安直に考えてしまうのはヤヴァイか。