夢の復習
子供の頃からよく見る夢がある。それは多くの場合、欲にまみれた夢か、悪夢である。
そういう夢は、決まって同じ舞台と同じストーリーと同じ結果が待っている。そして大抵、中途半端で終わる。
よく見る夢のくせに、目を覚ましたあと、見た記憶が失われてしまう。後日、再び同じ夢を見て、過去に見たことのある夢であることを思い出す。だが、またすぐに忘れる。これを繰り返すのだ。
その典型的な夢の不思議を一つ、記録してみることにした。そうだ、絵に描いちまえ!
でも、もしこの話が私の本音であるとすれば、かなりヒドい人格の持ち主であると思われてしまうので、どうか内容は冗談だと思っていただければ幸いです。
なお、絵が下手に見えるのは夢でも冗談でもありません。
一枚目:二つの入り口
さて一枚目は、汚い駅の一角である。駅に見えないかもしれないが、都会にある不潔な印象の大きな駅だ。たぶんJR上野駅の妄想版。
人通りの少ない場所に、この奇妙な二つの入り口がある。普段は不気味がって、誰も近づかない場所のようだ。
それにしても、なぜこのような入り口があるのだろう。予想してみた。
- 自分を恐ろしい世界にいざなおうとしている。不気味な雰囲気をかもし出し、さも「何かあらん」と思いたいがため
- 実際の一部の駅に、このような印象を持つ風景があるため
- 夢の中でアドベンチャーゲームを遊んでいる。君は右に入ってもいいし、左に入ってもいい
一番まっとうそうなものは二つ目の可能性だが、私の夢だから全部当てはまるような気もする。そう思った理由は、このあとの話を見れば理解できるだろう。
いずれにせよ主人公は、左の入り口に入り込むのだった。何となくだが、奥に「いいこと」が待っているような気がするのだ!
二枚目:そこは地の底パラダイス
左の入り口に入った主人公は、曲がりくねったり坂道を上ったり、下ったりを繰り返し……やがて……
やがて、暗いがとてつもなく広い場所に出た。大広間だ。ちょっと殺風景だが、何名かの男女がそこでダンスを踊っている。
こんなにも暗くてジメジメした場所で、パーティをしているなんて普通じゃない。なんでこんな場所が出現したんだろう。
そしてなんの脈絡もなく、一人の美女が主人公の前に現れた。
しかも彼女は、笑顔で主人公を誘っているではないか!
日本人ばなれした美しさを持つ東洋系の女性だが、外観はあんまり詳しく憶えてない。その姿は、左右に広がる髪の尖がりと、眉の長さが印象的である。ちょっと冷たい顔立ち。
アップロードしてから服装が変だと(形が変なのと、イメージとも違うと)感じたけど、直すのが面倒くさいからこのまんまで。
で、なぜこのような女性が現れたのか、理由を考えてみる。
- 理想の女性像である
- 来訪者を罠にはめるために、効果的と思える魔性の女を想像したらこうなった
- オカマというオチを想像した
主人公は、彼女に誘われるがまま駆け出す。ひょっとしたら罠かもしれない。でも知らん。
そして、このあと……
このあと主人公と彼女との間になにが起きたかは、みなさんの想像にお任せします。
こ、ここまでは悪くない夢だった!
友人の制止を振り切り、中へと入っていく
さて、左の入り口からは無事に帰還した。今度は右の入り口に挑戦だ。
ここで、誰かが主人公に話しかける。
「そっちにも入るのか? 悪い噂しか聞かない。やめとこうぜ!」
ええいうるさい。主人公は無敵だ。強運の持ち主なんだ。血湧き肉躍る冒険譚が我々を待っている!逃げるわけにはいかないのだ!
いつの間にか、主人公のそばには男の友人(誰かは不明)がいた。いつ仲間にしたんだろう。まあいいか。
彼の忠告を無視して、より大きな利益が中にあることを期待して、主人公はもう一つの入り口、すなわち階段が見えている入り口へと入っていく。
このとき、一緒にいた友人もついてくる。どうやら手に入れた「お宝」は山分けということになりそうだ。
三枚目:奇妙な台車
コンクリート製のらせん階段を上っていく。
予想通りあたりは暗い。ライトも日の光もないけど、なぜだか視界だけは確保されている。とにかくらせん階段を上りつづける。
すると、奇妙な場所に出た。レールが走り、そこには戦車の土台のような形状をした、鋼鉄製の四角い物体が設置されている。鋼鉄製の四角い物体は、詳しくは分からないが複雑な構造をしており、何かの機械のようだった。これを「台車」と呼ぶことにする。
ちなみに、記憶不明瞭のため台車はかなり大雑把に描いております(それ以外も大雑把だけど)。しかも台車に乗っている友人の姿から、妙にやる気が感じられないのは気のせいだと思うことにします。
台車は、人が乗りこむような構造にはなっていない。それなのに、友人が積極的に乗ろうとする。
「俺が先に乗る」
どうやら人柱になってくれるらしい。なんというご都合主義の友人像!
そして物語の超越者たる主人公は、一瞬にして以下のカラクリを理解した。
- 遮断機は手動。持ち上げるとスイッチオン
- 遮断機が上がると台車が進み始める
- 台車は右折し、A穴に入り込んでいく
- 奥のB穴から次の台車が出現し、発射位置に装填される
何のためらいもなく遮断機を上げて、台車を動かそうとする友人。あたりには重厚な地響きが鳴り、足元が痺れるように揺れ始める。地響きはやがて轟音に変わっていく。
いよいよ轟音がやかましい水準に達したかと思うと、ついに台車が動き始める!
しかしここで主人公は、猛烈に嫌な予感を感じ取るのだった!
主人公は、すぐに降りて逃げろ!と一声を浴びせて、一目散に階段を駆け下り始める。
言葉を受けた友人は、動き出した台車から転げ落ちるように降りて、主人公の後を追った。
四枚目:退路を断たれ……
ついに最後のシーン。らせん階段を一目散に駆け下りてみると、案の定。
轟音はまだ鳴り止まず、震動も止まらず、シャッターは降り続けている。
全力で脱出を試みようとするが……、間に合わず、完全にシャッターが下りてしまう。
視界が暗黒に包まれたところで、場面が途切れたのだった。
主人公について想像できること
この物語における主人公の特徴は、以下の通りに想像できる。
- 無敵でもなければ運があるとも限らないが、根拠のない自信だけはある
- 危ない橋はまず友人に渡らせる
- 小心者でいざというとき、友人を見捨てて真っ先に逃げ出してしまう
- 誘惑に乗せられやすい
人間は、逆境に陥ったときにこそ真価が問われる。ふだん「いざというとき、命を賭けて友人を救う」などとのたまっていても、それを実践できるか否かは、実際に逆境に陥ってみないことには分からない。
今回夢に出てきた本人像が、本当に私の姿なのだとすれば、残念ながら私は、命を賭して友人を救うことはできないようである。
し、しかしだ。まだ上記の内容は確定事項ではないし、仮に事実であったとしても、人間の真価が問われる瞬間が、人生の中で来るとも限らない。願わくば、火事や事故が身近で起きませぬよう……そ、そうだそうだ、何も起きないことが一番なんだ。
夢の言いたいこと
この夢、どちらかというと悪夢の部類に入る。
一見すると楽しそうに書いているが(書いている間は楽しい)、実はかなり恐ろしい夢であることは明記しておきたい。
台車はかなりの速度で突っ走るので、もし移動手段として利用するのであれば、危険を覚悟することになる。そしてレールが配置されている通路は狭いので、もしレールの上に振り落とされれば、次の台車に轢かれて死ぬ。つまり台車は、凶器とするために鋼鉄製になっている可能性が高いのだ。台車は山型をしており、掴まりづらい。
そもそも、美女という「報酬」がとてつもなくアッサリと終わってしまった時点で、嫌な予感がしていたのだ。ちくしょう、あれがもっと濃厚だったらなあ。ちくしょう。
何か嬉しいことがあった後で、欲を張って次のギャンブルに手を出すとしっぺ返しを食らう、ということを自分に言い聞かせているように思える。
物語の続きの可能性
主人公たちはシャッターに遮られ、今すぐ外に出ることはできなくなったものの、台車に乗って移動してみるという選択肢は残されている。だからまだ、死んだわけではない。
はたして三枚目の絵にある「A穴」の奥に何が待っているのか、私の興味はそこに注がれている。