美女にフラれるかブスにフラれるか

学生の頃、私の近くには、女性にモテるK君という人がいた。彼は、私の周りにいるさまざまな女性と付き合いながら(三股とか当たり前)、対照的にモテない私とは友人であった。

私にとって幸運なことに、なぜか彼が手を出す女性は、ことごとく私にとって「ハズれ」だった。つまり女性の好みが合わないので、彼が近くの女性にいくら手を出そうと、私には痛くもかゆくもなかったのだ。

ある日、飲み会で互いに酔っぱらってから、こんな会話があった。

  • Kくん「熊ちゃんは誰が好きなんだっけ?」
  • 私「Aさんが好きなんだよなあ」
  • Kくん「そうなの!? Aさんってブスじゃんかよ……でもガンバレよー」

百洗錬磨の彼が言うのだから、私の好きな相手はブスなのだろうが、余計なお世話である。余計なお世話だが、このすれ違いっぷりは、交友関係に悪影響を与えない理由でもある。

ちくしょうブスなのかAさんって。

後日、私がみごとAさんにフラれて帰ってくると、彼はこう言った。

「フラれたって? 相手はブスなんだからブスって言い返してやれよ!」

なるほど、こういう励まし方もあるものかと思った。

K君は、多くの男から見れば「いい奴」だったので男友達が多かったが、女性にとっては悪魔である。何しろ、飲み会のたびに違う女性と旅行に行った話が出るのだ。出てくる写真は違う女性とのショットばかり。よくもまあ次々と引っかかる女がいるものと思う。

彼のおかげで、世の多くの女性に「男を見る目がない」ことを知ることができた。

人のことは言えないが、女性側のいう「男の善し悪し」とは、かくも馬鹿馬鹿しいものである。女性は自分にとって都合のいい世界を語るだけで、都合の悪い結果が待っていることまでは想像していないのだ。男性側の人生経験も、技術的相性も考慮していない。もしその感覚が正常ならK君のごとき男性に捕まるはずがない。

逆の立場で考えてみると面白い。男性側が女性に、言葉遣いをあらためろ、料理の腕を磨け、淑やかに振る舞い男性を立てろ、などと言ったところで実践できる者、その気になる者がどれだけいるか。冷静に聞けば、何をえらそうに一方的なことを言ってやがる、となっておしまいだ。女性の側が普段、いかに男性にいい加減な感覚で“意見”を言ってきているかが分かる。

モテる人は異性を振り回す。モテない人ほど異性の言葉を鵜呑みにする。異性を見つける上でモテる必要があるかはさておき、それが現実なんだろう。

一応、自分について補っておくと私、美的センスは必ずしも悪くないと思います。自慢じゃないけど、周りからカワイイと言われる女性にもフラれたことがあるんだ。本当に自慢にならないのがナンですが。