イメージ(魅力)の伝達方法・その2
前置き
前回の記事のコメント欄(http://d.hatena.ne.jp/kumashige/20070819/1187449703#c)で、nnnさんがキャラクタの職業イラストの有無について語ってくださっています。
あと、トラックバックでは、職業選択の自由について語られています。
ここでは、Desigeonでイラストがない場合に起きうる問題点について。
イラストを用いない場合の工夫について考えたい
イラストの問題点は良くも悪くもイラストだと生理的な好き嫌いではじかれる可能性が出てしまうのが痛いですよね。上手いとか下手とか関係ないですからね、絵は。テキストだけでも起こりうる問題ですがイラストのほうがよりダイレクトにはじかれやすい気がします。
イラストデザインがプレイヤーを選んでしまうことはよくありますね。
Desigeonのイラストの方針は、シナリオ作者ごとに考えてもらうことにしています。イラストはあってもなくても、私の目から見て同等の扱いです。
私の立場から考えたいのは、制作面の工夫です。
イラストに関する制作上の問題は、「イラストを入れたくても容易に素材を準備できない」ことではないかと思います。ウィザードリィや関連ゲーム好きの人たちには、絵を描く力のない人が多いと思います。
こちらの思考の順序としては、
- ゲームシステムには、職業イラストを表示できるようにしよう
- だけどイラストを用意できない人や、イラストを使用しないポリシーを持っている人たちもいる
- その人たちは、単にイラストを抜いただけの真っ黒な画面の中で職業を表現することになる。だけど、プレイヤーに対して職業イメージをアピールしたいと考えるのが自然だろう
- ならばイラスト以外の方法で、職業イメージを表現するにはどうしたらいいだろう
……と、こうなります。
今のところ、「イラスト以上に注意を惹きつける武器はない」が結論です(身も蓋もない……)。
これに対して、代替え案というか視点を変えてみるというか。グラフィック素材を、多くの制作者やプレイヤーが共有するような風潮を生んで得点を稼ぐ方法は、あってもいいと思っています(いずれ、書ければ書きたいと思います)。
マイナー作品でビジュアル情報がないことの問題
ウィズのようなものが受けた、あるいはいまだにファンがいるのはダンジョンが線画だったり自分のキャラに関するビジュアル情報が無いことにメリットを感じる層が歴然と存在するからだとおもいます
私もその通りだと思います。
とくに、ウィザードリィファンを対象としたウィザードリィ風作品ならば、おっしゃる通り絵的なイメージはない方がいいかもしれませんね。
ただ、ウィザードリィとマイナーなフリーウェアでは、頭の中のイメージ造形に決定的な違いがある。ウィザードリィのイメージなしと、マイナーゲームのイメージなしではプレイヤーの注意を惹きつける力がまったく違ってくると感じています。
日本の場合、ウィザードリィにはイメージがないことが人気というわけではなくて、イメージを補う第三者の力が豊富なだけだと私は考えています。この辺は『ドラゴンクエスト3』なんかも同様に感じています。
人気のあった当時、ファミコン版ウィザードリィをとりまくビジュアル情報は豊富でした。友人間で種族や職業について語り合ったり、攻略本のニンジャのイラストを見てニンジャ好きになったり、雑誌の特集で職業紹介を見て好きなパーティを想像したりといった要素の力が大きかったなあと、当時の思い出からはそういう感触があります。
ゲーム中に登場しないだけで、ウィザードリィの職業に関するイメージはたっぷり世間に流れていたんです。
マイナーゲームには、こうした第三勢力の加勢が弱いです。Webサイトの紹介と、ゲームのマニュアルで表現が閉じられてしまっています。プレイヤーの中に占める存在感があまりにも小さいために、頭の中に残らない。ですから、何らかの形でインパクトを強めてやらないと、職業に魅力を抱いて貰えない。
致命的なのは、本家でもない人間(つまり我々)がウィザードリィ風を語り個人作品を出したときに、プレイヤーには本家と同じであるという安心感を持って貰えないことです。たとえば「ファイター」の認知度がいかに高くても、本家ウィズのファイターではないので、どこまで同じとみなしていいか分からない。
たとえば、プレイヤーが以下のような疑問を抱いたとします。
「すべての武器を扱える? そりゃ、ウィズのファイターは強かったけど。このゲームって見たこともない呪文とかスキルが出てくるから、それが実感できないよ。戦士のカシナートと竜騎士のバックアタック、どっちが強いの? ぶっちゃけ戦士以外でもよくない? ってことは戦士って見劣りしない?」
プレイヤーがこんなことで悩んでも実際のところ、作品の方でしっかり調整されていて、戦士でも竜騎士でも遊べるのかもしれません。だけどスタートの時点で、プレイヤーがこのような立ち往生をしてしまう時点で、職業システムがうまく伝わっていない証拠だと思うのです。「オレは前衛を戦士3人と決めてあるぜ!」と意気込んで取り掛かれるウィザードリィとは大違いです。
私個人はウィザードリィは好きでしたが今のところ、イメージのアピールがない(職業の魅力が伝わってこない)類似作品では、プレイに対するモチベーションが生まれません。せいぜい、最初から組み込まれているパーティを使って恐る恐る探検に乗り出す。頑丈なのかも、攻撃力が高いのかも、よく分かっていません。そういう状況でゲームを開始することになります。
ウィザードリィの楽しみの一つに「パーティ編成」というものがあったはずなのに、そのやる気を植え付けてくれないのだから、すでにウィザードリィという感覚は失われていますね。
私は『かわいそうな王』を作りながら、このままではクラシック・ウィザードリィの8職業以外は作れない。違うものを作っても永遠に独りよがりで終わる。そこから一歩も逸脱できないまま終わる。そう切に思いました(作者によってはそれでもいいのでしょうけれど)。人の作品を見てもそう思います。とても重要な「最初の楽しみ」を放棄して、いきなり迷路に放り出すものばかりです。
それで、何かちょっと工夫できないかな、と思った次第です。