説明できない固有名詞はRPGに出さない方がいい

マイナーなRPGにおいて、プレイヤーにイメージの伝わらない固有名詞は使わない方がいいと感じることが良くある。

たとえば、ストーリーとはまったく関係なさそうなアイテム「双竜山の羽衣」がRPGに出現したとする。「双竜山」ってどんな山だろう。その羽衣は誰が何のために作ったのか。どんな着心地なんだろうか。名前からイメージを膨らませる取っ掛かりがないと、そのアイテムを手に入れてもシラけてしまうことがある。

ゲームの中で背景を説明できるときは、目立つ固有名詞を与えてみる

それを聞いただけだと浮いてしまうような固有名詞は、その名付けを用いた背景をプレイヤーに説明できるときに使うといいんじゃないか。

たとえば先に挙げた「双竜山の羽衣」というネーム。もしそのゲームに「双竜山」という山が登場し、「双竜」と呼ばれる竜の怪物が登場し、そこにイベントを用意し、それらしいストーリーを展開するつもりであれば、「双竜山」にまつわるアイテムをたくさん登場させたとしても問題ないと思う。

にもかかわらず、名前だけでは想像のしようがないアイテムがよくゲームには登場する。想像しきれない固有名詞には違和感を感じてしまう。とくにグラフィックが伴わない場合は強い違和感を感じる。何らかの形でネームの説明が欲しい。

ドラゴンクエスト3』の「草薙の剣」

いいと思った例として、『ドラゴンクエスト3』に登場した「くさなぎのけん(草薙の剣)」がある。「草薙の剣」は、ヤマタノオロチを退治するための剣だった。

「草薙の剣」はもともと日本の昔話に登場する固有名詞だけど、それが不似合いなゲームに出してもシラけてしまう。シリアスなゲームで、パプアニューギニアに住む鍛冶屋が「草薙の剣」と「オーディンソード」を作り上げて冒険者に売りに来たら脱力してしまう。伝え聞く名前を使えばいいというものではないだろう。

だけどドラクエ3の作者は、ヤマタノオロチという怪物と冒険者を戦わせるイベントを設け、ストーリーを見せることで、剣の存在意義を説明した。背景にはジパングという和風の村が用意されていて、そこの村人が口々にイベントの話をしてくる。だから私は、その流れで「草薙の剣」が登場したとしても違和感を感じなかった。

「草薙の剣」のネームを私が受け容れることができるのは、その剣が世に存在する背景が物語によって説明されたからだと思う。

説明のできないアイテムには固有すぎない名詞を与えてみる

固有すぎる名詞の説明がストーリーによってできないならば、固有すぎない名詞を与えてわかりやすくしてみる。たとえば、「ロングソード+2」とか、「Sword of Power」といったような。

「強い斧」とか「錆びた剣」とかって分かりやすくていい名前だと思う。ローグライクやウィズライクのような乾いた世界観を持つゲームの場合、こうした部分もシンプルにキメたいところ。

ファミコンウィザードリィの「病めるメイス」「破滅の短剣」「豪華な革鎧」「ひび割れた胸当て」なんかも秀逸だと思いませんか。相対的な価値がはっきりしていたり、いやらしさがよく表されている。シンプルな線画ゲームや文字ゲームに登場するアイテムの名称に相応しいと私なんかは感じる。

お堅くて乾いた世界観の中なればこそ、乾ききった名前を出してやりたいじゃないか。名付けも原点に返って考えてみたい。ワードナの迷宮にファイナルファンタジーのアイテムばかりが出てきたらギャグにしか見えない。