長いゲームには踊り場が欲しい

コンピュータゲームを遊ぶときのやる気を維持する話。

どうも私は、メリハリのある階段を上ることで遊ぶ気持ちを維持しているようだ。国取りものなどの戦略ゲームを遊んでいるときのことを思い出していて思った。

  1. 長いゲームには踊り場が欲しい
  2. 節目となるイベントも必要だが、間を埋める踊り場が欲しい
  3. やる気を維持するための要素は細かいところにある

もっといろいろ書いてあったけど、長いのでカットします。続きを投稿するかは神のみぞ知る。

長いゲームには踊り場が欲しい

コンピュータRPGなんかだと、同じような戦闘を何十回、何百回も繰り返さなくては攻略できないようになっている。

戦闘の繰り返しは単純作業になってしまい面白くない。

一方ではつい長時間、戦闘を繰り返してしまうこともある。たとえば「“はがねのつるぎ”を買うために三千ゴールド溜めよう。あと少しだ」と思ったら、それに向けて一生懸命金稼ぎのための戦闘を繰り返してしまうことがある。

それは戦闘が楽しいから繰り返しているんじゃなくて、お金を貯める楽しみがあるから繰り返しているんだと思う。

ウィザードリィも同じだ。飽きるほど繰り返した末の戦闘は面白くないけど、「村正が欲しい」というその一心で地下十階を繰り返し歩き回る。エンカウントのたび、いいアイテムを持っていそうなモンスターの時は戦闘をするけれど、それ以外の場合は逃げて扉を開け直す。逃げ損ねたらリセット。これの繰り返し。そして村正を得る課程では、それよりも若干価値の低いアイテムが見つかったりして一応喜びながら遊ぶ。村正入手率はとても低いけど、利益を少しずつ実感していくことでモチベーションを維持するのだ。

ところが「三千ゴールドを溜める」とか「村正を手に入れる(途中でやや価値の低いアイテムを得る)」という目的は、私が心の中で作り出したもので、ゲームが定義する最終目的じゃない。にもかかわらず、実際にはそれが楽しみでゲームをプレイする。そして私が必死になって三千ゴールドを溜めているとき、大魔王を倒すというゲーム本来の目的など頭から消え失せている。

長い階段には踊り場が欲しい。階段を上る行為そのものは単純作業だから不毛なのだ。踊り場でのひと休みを楽しみに、ゲームプレイヤーとしての私は階段を上り続ける。でもはるか高い目標を目指してだらだら上り続けるだけでは息切れしてしまう。間を埋める規模の小さい目標が他に必要なのだ。いつも「とりあえず、次はあの踊り場まで行こう」と思わせてくれるゲームでなければ飽きてしまう。

中小さまざまな目標への到達を繰り返すことで、長編ゲームを最後まで遊びきることができる。

節目となるイベントも必要だが、間を埋める踊り場が欲しい

RPGの目標物件と言えば、ときに「中ボス戦」とか「お使い」とか呼ばれる種類のイベントが役割を担う……かのように世間では言われているように思う。

「中ボス戦」とか「お使い」とかいったものは、確かにシナリオ造形においては担う役割が大きい。魔王を倒す前に姫を救出するイベントを挟めばひとつのドラマを作れる。そのドラマを優先して見せるためにそれを「必須イベント」にしてしまう。突破が義務だから、まるでゲームの柱として、プレイヤーが常に「中ボス戦」「お使い」に沿って行動し、攻略を重ねているように思いこむ。

それは確かに間違ってないんだろう。「中ボス戦」にも「お使い」にも攻略法があり、それを見出さないとゲームが先に進まなくなる。けれども、これらの目標物件は大域的な節目に登場することが多く、より身近な、わずか一分先のやる気を植え付ける要素としては使いづらい。

たとえば「悪魔の塔にある魔法の杖が必要だ。それがないと呪いが解けない(から先に進めない)」というメッセージを、プレイヤーがシナリオから読み取ったとする。こなれたゲームプレイヤーであれば、塔を探して戦闘を繰り返すことを「作業」だと感じることがあるかもしれない。それは「魔法の杖」にいたる道程が容易ならざることを想像してしまう、あるいは、どれほど苦しい道のりになるか想像できない不安がある(道程の楽しみが想像できない)からではないか。

「魔法の杖」にたどり着くまでに時間がかかるなら、結局その間を埋める細かい踊り場がいくつか必要になってくる。

やる気を維持するための要素は細かいところにある

RPGを遊んでいるプレイヤーが多くの時間考えていることは、「中ボス戦」「お使い」の攻略方法なんかじゃない。本当はもっとミクロなことを考えてる。

  • 三千ゴールド溜まれば「はがねのつるぎ」が買える。あとちょっとだ!
  • レベル四になればバギの呪文を覚える。あとちょっとだ!
  • 対岸に街を見つけた。どうやって渡ったらいいんだこの川?
  • さっき、ここで報酬のおいしいメタルスライムが出た。また出ないかな

こうしたことの連続が、やる気を維持するのだ。少なくとも私はそうみたいだ。

なぜなら、三千ゴールドで買える「はがねのつるぎ」は今持っているものよりもいい武器であることが期待できるし、「ドラゴンクエスト2」のバギの呪文は記念すべき初めての「集団攻撃呪文」だ。また初めて訪れる街にはワクワクするから、川の向こうに見える街にはなんとしてもたどり着きたい。メタルスライムでレベルがバンバン上がる快感を知っている。どれもプレイヤーが過去の経験で知り得たことばかりだ。

そういう過去の経験をもとに期待が膨らむから「進もう」という気にさせるのだと思う。見たことのない「悪魔の塔」や「魔法の杖」なんかよりもバギの呪文の方が重要なのだ。「魔法の杖」が必要なのは一瞬だけ。

RPGにはイベントがつきものだろうけれども、それ以外にもっと細かい工夫が欲しい。たとえば巧みに誘導をちりばめた地図とか、育て甲斐のあるキャラクタ成長ルールとか、アイテム探しする気になるアイテム体系とか。まだ他にもたくさん。

細かいことの一つ一つが「踊り場」となる可能性を持っている(すべてではない。どれがヒットするかはプレイヤーによって違う)。