分かりやすく見せるためにルールを曲げる(スキルツリーより)

以下は、世間的に些末な部類に入るフリーウェアゲームや、同人ゲームの立場から書いています。RPG向けです。

3DダンジョンRPGの「ダンジョンクルセイダーズ2」(以下DC2)は、スキルツリーを採用してキャラクタ育成の手続きを明示したことで、プレイに対するモチベーションを継続維持しやすくなったように思います。

スキルツリーとは

まず「スキルツリー」とは。ここでスキルツリーと称しているのは以下のような、キャラクタが習得する予定のスキル(コマンド)を一覧した分岐図です。ゲームの中で、手持ちのキャラクタがこれらを「習得」すると、当該キャラクタの「性能」が上がるものと思って下さい。

[ HPボーナス ]┐┌[ 猛襲の構え ]┐
├┤ ├[ オートガード ]─[ 騎士の誇り ]
[ MPボーナス ]┘└[ 守勢の構え ]┘


┌[ ディバインソード ]─[ディバインストライク]┐
[攻撃力ボーナス]─┤ ├[ヴァルキリー]
└[ライトニングソード]─[ライトニングアサルト]┘

プレイヤーは、手持ちのキャラクタが成長するごとに、一番左に書かれているスキルから選んで習得し始めます。1レベル成長するごとに、カッコの区分一個しか選べません。しかも上の例では、はじめ「HPボーナス」「MPボーナス」「攻撃力ボーナス」の三択しか表示されません。選んで成長させたラインについては、徐々に右の方のスキルを選べるようになります。

たいがい、右にあるものほど有用なスキルになっています。

DC2のスキルツリーには、もうちょっと細かい規則があるのですが(そして問題も含んでいるのですが)割愛します。

スキルツリーのメリット

不慣れなゲームプレイヤーが、上の例にあるスキル名「ディバインソード」だとか「騎士の誇り」だとかを、言葉の上で説明してもらっても、普通は何のことやらサッパリ分かりません。

しかしスキルツリーが画面に表示されていれば、以下のメリットを得ることができます。

  1. 価値の大小関係を端的に示せる
    • 「一番右にある“騎士の誇り”が強力そうじゃない?」
  2. 選択肢が事前に機能する
    • 「“騎士の誇り”と“ヴァルキリー”のツリー、伸ばす予定をどちらに立てようか」

文字の位置関係によって、これらを軽く印象づけるだけでもだいぶ「キャラクタ育成」に対する興味が違ってきます。

たいがいのゲームプレイヤーはテキストマニュアルを読みませんから(実はDC2のマニュアルにもスキルの説明がないのですが、それはさておき)、上にあるようなスキルの選択肢を、魅力的な方法でゲーム画面に提示しておくことが重要だと感じました。

そして、画面に表示するスタイルとして、キャラクタの成長を端的に表した上記「スキルツリー」は、強烈にプレイヤーの挑戦心を煽るなあ、と感じた次第です。

レベルアップした瞬間の感情例

以下、実際にゲームの中でキャラクタがレベルアップしたとき、どんな情の流れが起きるか、対比して示します。比べる対象は私のゲームシステム「Desigeon」でいいや。以下、AとBの感覚の違いをご覧下さい。

  • A.レベルが上がった! → 体力?筋力?知性?どれをアップしよう
  • B.レベルが上がった! → やっと「ヴァルキリー」を憶えられる

Aは私のDesigeonです。Desigeonは、採用している能力値に「レベルアップボーナス」を割り振ることで、キャラクタの性能を上げていきます。それによって攻撃力が上がったり、行動が素早くなったりします。時に、新しい戦術コマンドを憶えることもあります。

BはDC2です。Desigeonと同じく、レベルアップに伴い「スキルボーナス」を貰ってプレイヤーが割り振る仕組みですが、スキルツリーの構造がビジュアル的に頭に入っているプレイヤーは、レベルアップ前にキャラクタの育成計画が完了しているのです。

両者の違いから沸いて来る、ゲームプレイに対するモチベーションの違いは大きいです。

マイナーゲームの不利さ

以前より私は、マイナーゲームにおけるキーワード定着の難しさについて語ってきました。固有のアイテム名、呪文名、モンスター名など、プレイヤーは作者が考えるほどはじめ、興味を向けてくれません。

市販ゲームより露出が少ないので、ゲーム内での誘導や啓蒙の重要度が高いのです。スキルツリーのような便利な表現は、盛り込みたい要素だと思います。

しかし、そういった機能に制作コストがかかることも確かです。やらないよりはいいので、開発はじめ、簡単でもいいから設計に盛り込んでおきたいです。例えば、上に挙げたスキルツリーはただの「テキスト」です。ただのテキストなら、表示することは簡単だと思います。

テキストである以上、複雑な表現はできません。それなら、簡単なビジュアル表現でも済むようルールを落とし込む手があります。作者が考える育成(選択)システムの論理を犠牲にして、画面との連動を優先させるのです。システムの論理は、画面表現という制限の上で構築することになります。

マイナーゲームは市販ゲームより露出面で不利です。市販ゲーム以上に、わかりやすさを優先させる選択もアリだと思います。

まとめ

  • スキルツリーは、キャラクタ育成への興味をもたらします
  • マイナーゲームでは、ルールを魅力的に表現したいです
  • 画面に合わせてルールを変更する思い切りも、時には持ちたいです

よそのブロガー各位のマネをしてまとめてみました。すいません特許料は支払いませんが許してください。