古いゲームルール「SAN」に驚く

ネットのいろいろな場所で、冗談で狂った(ふざけた)発言を見せたのち、「SAN値が、SAN値がー」と叫ぶ行為を見かける。

はじめはローカル用語だろうと思い、意味を知らずに済ませるつもりでいたが、そこら中で目にしてから気になり始めた。

サン値?何それ。なんで流行ってるの?

不思議に思い、SAN値ってなんだろうとその場の流れでさりげなく尋ねてしまった私が自分に失望することになった。

そのときはありがたいことに、親切な人が教えてくれた。「SANは正気度です。クトゥルフというTRPGの……」という話が出て、ああなるほどと思うと同時に驚いた。

クトゥルフといえば相当古いゲームルールだろう。その中で使われている言葉が、現代のネットユーザーに受け入れられていることが凄い。そんなにクトゥルフを遊んでいる人が多いのか。

何より悔しいのは、本棚に入ったルールブックの背表紙を毎日目にしている私が、SANのことをすっかり忘れていたことである。

慌てて「クトゥルフの呼び声」を本棚から取り出して確認した。あった。確かに、4番目に「狂気」という章がある。正気度をSANと呼ぶことはもちろん、SANの増減やその結末について詳しく記載されている。

クトゥルフの世界といえば狂気・恐怖である。大半の主人公が、あるいはプレイヤーキャラクタが発狂して死ぬ。そのことは印象的だから知っている。ラブクラフトの小説も読んだことがある。

だけど、ほとんど運用したことがない「クトゥルフの呼び声」のTRPGルール自体は、まるで頭に入っていなかったのだ。ルールブックは運用しなければ知らないのと同じで、さまざまなルールで運用する機会が少なかった私にとっては残念なことに、過去の財産がこれまで役に立っていなかった証明にもなってしまった。

ところで、手元にあるルールブックは1989年の骨董品である。ネットでそこらじゅう、狂った発言をして冗談めかしつつ「SAN値がマイナスだー」とか叫ぶ時代が来ることなど、当時の開発者も、これを遊んだ人たちも考えなかっただろうなあ。

それにしても、クトゥルフのルールってそんなにメジャーなのか!?驚愕のあまりSANチェックに失敗しそうです。