らんちゅうの水槽にいる謎の生物

春のためか、産卵ラッシュ。我が家では二匹のメス猫も飼っており、毎日のようにオス猫がニャァニャァと来訪する。そして、うちの猫は逃げ惑う。

猫が盛りまくるのと同様、水中生物たちも大忙しのようだ。

透明ガラスの壁に点々と張り付いた彼らの卵を見ていると、つい他人の幸せを奪ってやりたくなる。指でぶちゅっと。

水中でダイナミックに絡み合い、交尾を繰り返すタニシを見ていると、おもわずこっちまで………。…こっちまで……こっちまで、何だ?

つーかお前ら、この数異常。頑張りすぎ。流れ作業のごとく、柔らかい体を相手の硬い殻に張り付かせて、絡み合っては産み、絡み合っては次を求め、所構わず相手構わずイチャイチャしては産む、ということを繰り返しているのだ。まるでタニシの生産工場。というか乱交状態。

タニシはともかく、水槽で飼っている本命のらんちゅう(金魚の種類)についても、ふ化の季節だ。わずかな期間の間に、ガラスや石に張り付いた卵から一斉にふ化を始め、気づけば水槽内に数百匹を数える稚魚が誕生していた。

ふと見ると、水槽の下に敷き詰められている小石の間に、ウニウニと動く生物がいる。そいつは体長1センチに満たない細いミミズのような生物で、もがくように体全体を蠢かせ続けている。一体、何の生物だ?

スポイトで吸い上げて外に出してやると、衝撃のためかそのまま死んでしまう。で、虫眼鏡でじっくり観察してみたのだが、どれも体の先、水槽の中では下側に向けて、黒い塊をくっつけているのだ。おそらく、これは卵で、もがきながらふ化しようとしていたのではないか。胴体部は白く濁った半透明色で、こげ茶色の縞模様がついており、顕微鏡などで拡大するとグロテスクそうだ。

こんな生物を入れた覚えはない。ということは、小さなミミズ(水中でなければウジと呼んでいたところだ)がいつの間にか産みつけられていた、ということになる。この生物は一体なんだろう、と思い調べてみたが、水中生物にこのような姿とふ化様式を持った生物は見当たらない。

最初、「蚊」ではないか、つまりボウフラだろうという予想を立てていたのだが、蚊は水面に卵を産みつけ、そのまま孵る。今回の生物は、すべて床の小石の間に挟まって、そこから体を上に向けてもがくようなイメージで一斉にウニウニと動いていたのだ。水槽中の床、そこかしこにバラバラに発見された。ぱっと探したところ、数は二十に満たない。

今でもこの生物については謎だ。まだいるかもしれないが、ここ二〜三日は発見できていない。

ただ最近、蓋をしている水槽の水面と天井の間に、蚊らしき小さな生物が何十匹も発生していることがよくある。それぞれ子供のためか動きが鈍い。それどころか、一日中壁や天井に張り付いて動かない。水中で孵った蚊が、自由に飛べるようになるのを待つために休んでいるとしか思えない。

あのミミズは、この蚊らしき小動物なのだろうか。