RPGツクールから学べる細かいイベント命令

RPGツクールXP体験版がえらくバージョンアップしてて驚いた。

RPGツクールXP/VXのキャラクタ職業には転職機能があった。知らなかった。そしてここがポイントなのだが、転職するときの能力値の変化やスキルの習得・忘却は、イベントコマンドによりシナリオ作者が手順を指示するようになっている。つまりただのイベント命令に過ぎない。

複雑な機能をイベント命令に細分化する考え方

イベント任せというのは、ツールの作り手としては楽でいい。

Desigeonはウィザードリィを意識するあまり、特定の施設に転職の機能を搭載しようとしたり、店でのアイテム売買も価格変動や在庫管理など余計な機能を想定してしまい、結果として複雑化を招いている。

けれどもツクールは、多くの機能をイベントコマンドに集約しており、シナリオ作者が学ぶべきことが分散していないのだ。一見すると機能がないように見えて、イベントを掘ってみるといろいろなことができることが分かる、というところがいいのだ。

全体的にサンプルがシンプルで分かりやすい。ツクールの画面はいささか文字が小さいが、情報量が少ないので見やすい。機能は豊富でないけれど、シナリオ編集には入り込みやすい。

ウィザードリィにこだわってると、まともなサンプルはいつまで経ってもできないので、この辺は学びたいところ。いろいろな使い道を想定しているDesigeonにとって、自由度の高いウィザードリィの仕組みは、基本ではなく応用の部類だ。簡易ツールなのだから、もっとシンプルなものを先に作れなければならない。

たとえば施設については、完全に廃止する手もある。その代わり、街でイベントを処理できるようにすればいい。

一方ではイベントプログラムに頼りすぎることに対して危惧も感じる。素人がどれほど細かい命令体系を使うだろうか。多くの素人はおそらく、イベントに懲ろうとして挫折するはずだ。無駄な機能を捨てる勇気を持った者にしか使いこなせないのが、低水準の言語体系というもの。

ウィザードリィのイベントのシンプルさ

私が無駄に複雑だと感じるウィザードリィが、他ゲームに比して決定的にシンプルだと感じる部分が一点ある。それは大半のゲーム進行フラグが、すべてアイテムの有無で管理されており、現在地点でアイテムの有無を判定していることだ。

アイテムに頼らないウィザードリィのゲーム進行フラグは二つだけ。一つはエンディング(ワードナが出現しなくなる)、もう一つは地下四階のアラームだ。他には無いはず。

アイテムを判定するときの割り切り方も凄い。一貫して座標でしか判定しない。画面の中ではドアをくぐってるのに、鍵を持っていなければ一歩下がらせてドアの前に戻すなんて考えてみれば滅茶苦茶な話なんだけど、ウィザードリィでは鍵を通行証とみなして(つまり鍵穴に差し込む鍵じゃなくて、単なる割り符として)割り切ったイベントにしてる。他には玄室でパーティの進路を遮ってるけど、これは汎用イベントであって特別に記憶しておくものじゃない。

……うーむ、それだけに地下四階のアラームは蛇足だったなあ。あれがなければピュアなアイテムフラグゲームになれたんだな。っていうかゲームやる側としてはどうでもいい話なんですが……。

フラグアイテムだけでゲーム進行を制御するなら、ツクールの多くのイベント命令はいらないという話だ。で、それだけでも十分ゲームになっちゃう例が世の中には存在するという話でありました(ツールとしてのシンプルな例が3DRPGCSですね)。

需要も供給も、どちらも万能じゃない。何を求めるかは作り手がイメージするモデル次第なんだろうけど、それを受け止めるツールとして何を選び、何をあきらめるかはとても難しいところ。