メモリアル・サウンド・オブ・ウィザードリィ

Wizardryサウンドトラックの話。

CD枚数は6枚で、コンシューマ向けの原点となったファミコン版Wiz#1,2,3が一枚ずつ、外伝に一枚、Wiz#5に一枚(おそらくSFC版以降の音楽)、ドラマCDが一枚である。

* おおっと! *

CD全体の箱は宝箱のデザイン。

ふたを開けるとさりげなく「OOPS! TELEPORTER」(おおっと!テレポーター)の文字が目に飛び込んでくる。

これは、WindowsWizardryのリルガミンサーガの箱にも使われていた手法だ。ニヤリという笑みを誘う。

知っているサウンドは期待通り

一枚目を聴き始めると、あの懐かしい初代Wizardryのオープニングが流れる。重厚なオーケストラでずっしり響いてくる深みと、こみ上げる懐かしさが肌に染み入り、おお、とつい声を上げてしまう。期待通りだな、という最初の所感だ。

知っている音楽については文句のない出来映え。ゲームのサウンドトラックの質としては、できのいい方だと思う。

フリー素材に使用したいWiz#2

ちょっと変わっていると感じたのがWiz#2(FC版なのでリルガミンの遺産)だ。

Wiz#2にはファミコン版の効果音が一通りついており、Wizのオマージュを制作している身としては、つい「フリー素材として使わせてくれよ」と漏らしてしまう構成である。効果音はこれ一枚があれば、当時のWiz#2が再現できそうだ。

ネタドラマ

そしてなんといっても、ネタとして外せないのがドラマCDである。

ドラマCDの内容は、小中学生向けのヒーロー物ベタドラマ。舞台はワードナの迷宮だが、取りに行くクリアアイテムはハースニールという剣で、これはFC版Wiz#3のアイテムである。

声優陣は少数精鋭ながら、ストーリーについては、懐古世代にとってギャグにしかならない稚拙さがある。熱い血潮をたぎらせる少年ファイターとお姫様メイジのノリは、かつてロードス島戦記イースのストーリー物にハマった世代に符合はするものの、内容的には今さらという感じで、工夫もボリューム感もない。

特に、「クリティカルヒットがどうの」「レベルが高い」などとプレイヤーサイドが語るべき言葉をドラマの人物に語らせてしまうものだから、聞き手は現実に戻されいつまで経っても物語に没入できない。ドラマCDを聴きながら私は、笑いをこらえるのに必死だった。

結局、ネタとして捉えることができたということは、それなりに価値のあるドラマなのかもしれないが。深く語るような内容ではない。

個人的には、少年誌の『ガンガン』を思い出した。

価格はどうしても割高感がある

価格は約1万3千円。小金持ちの懐古世代層に、ここはひとつ思い切ってみたらどうだ、と決断を迫る数字である。

適正価格について語るなら、二枚ぶんの価値を間引いて価格を設定して欲しかった気がする。普及を目指すなら一万円を切らせるべきだった。しかし限定生産という名目があるようなので致し方のないことか。確かにこの手の商品は、数年をおかないうちに入手困難になることが多い。

6枚すべてのCDを「懐かしい」「面白い」と感じることのできる懐古プレイヤーは、なんとか受け容れられる価格帯だと思う。しかしそのような人はあまりいないのではなかろうか。

私にとってSFC版Wiz#5と外伝の音楽は、その価値がよくわからない。商品としての価値が三分の二になっているのだ。これはゲーム未経験である以上は仕方のないことだが、このような人は決して少なくはないだろう。

すべてのCDに価値ありと見なせるか分からないプレイヤーには、思い切りが欲しい価格と言える。いずれ来るであろう、入手困難対策と割り切れるか否か。

ドラマCDの担当も懐かしい顔ぶれ

余談だが、ドラマCDの制作を担当しているのは、ベニー松山氏と須田PIN氏である。

両者とも、Wizardry関連の書籍では当時から随分とお世話になった。特に須田PIN氏の攻略本には私の友人も数名が世話になっている。

攻略本の中で、さりげなくベニー松山氏の著書『隣り合わせの灰と青春』を紹介しているところが印象に残ったが、まさかこんなところで二人が競演していたとは。