親の遺言と別れ

両親が遺言をのこして別れを告げ、旅立っていきました。

自分たちが死んだら遺産は兄弟で分けろだとか、保険の請求はどの引き出しに入ってる書類を使えだとか、通帳を見れば何にどんなペースで支払ってきたかが分かるだとか、お婆ちゃんの面倒をよろしくとか。

しんみりした口調で、俯き加減に語って、私の前から姿を消しました。

あとのことが心配で心配で仕方がないけれど、これは、覚悟してやらねばならないことだから……と、不退転の決意で「それじゃ、あとは……任せたから」と、浮かない顔して旅立っていったのです。


ええと、飛行機の乗るのが初めてなのだそうで、万が一、墜落したときのことを考えて、だそうです。日曜の朝、いきなり上の内容を語られて、ポカンと口を開けてしまった。

私の方はと言うと、4日後の再開まで、このありがたい遺言を忘れないようにしないと。

家の中で一人、自由を満喫してると忘れそうです。やれやれ驚かしおって。


あとで電話したんですが、きちんと繋がりました。往路は無事だったようです。

飛行機に乗っている間、えらく感動していたらしい。出かける前は上記の通り、浮かぬ顔で遺言を語ったり、酔い止めの薬を必死に探したりしていたんですが。いざ乗ってしまえばなんてことはない。

でも、気をつけてくださいね。現地で借りた車で事故を起こす確率の方が、たぶん高いから。