ザ・劉禅!能力値にアイロニーを

中国ン億年の歴史に、三国志という物語がありますね。で、その中に、劉禅というオイシイ人物がいるんですよ。

どうオイシイかというとね、とてつもなく弱いんです。とにかく小心で弱くて使えないダメ男、ザコの代表です。どれだけ弱いかというと、ドラクエならドラキー並み。ドラゴンボールならウーロンあたりを挙げましょうかね。それだけキツい役回りを与えられています。

ところがこの劉禅、一点だけ凄まじいステータスがあって、なんとこやつ、皇帝なんです。中国を三分割した国の一つ、蜀の国のトップがこの劉禅なんです。皇帝陛下サマサマです。逆らったら死にます。

そんな劉禅さまが、なぜ後世にひどい扱いを受けているかというと、理由があるんです。彼は一国の主でありながら、自分の国を内側から腐らせて、滅ぼす一因を作ったことになっています。悪大臣をのさばらせる一方、自分は酒と女の日々を送って仕事をしなかったと。で、最後は敵に攻められて、あっけなく降伏です。

降伏したあと、敵国に連れ去られた劉禅はそこで安穏とした日々を送ります。先代(一般的には三国志の主人公)の苦労と、国のために死んでいった将兵たちと、故郷の香りを忘れて、死ぬまで楽しく過ごしました。そういう逸話が残っています。

まさにアホゥの代表格たる劉禅ですが、コーエーのゲーム「三國志10」の中の設定が興味深いのです。能力値が面白い。

頭から統率3,武力5,知力9,政治4,魅力64という値です。ええ、繋げると359464、三国志無視というわけです。たぶん、三国の緊張状態を無視して物語を壊した人、って意味だと思います。

これを見た私、あまりのテキトーっぷりに失笑しました。能力値はそれぞれ100が最大なんですが、RPGと違って「成長」をあまりしないゲームなので、ひと桁の能力値というのは、もはや3も5も9も、たいしてかわらんもので。たぶん開発者の頭では、ゲームバランスのことなんてどうでも良かったんでしょう。アイロニーとジョークを設定したその日の夜、設定担当の人はぐっすり眠れたことと思います。おかげで劉禅でプレイするの大変なんだから。


映画界では三国志を題材にした「レッドクリフ」が熱いようですが。

あの素晴らしい映像美に彩られたドンパチと、知恵と勇気と力と人の和が、さんざん混ざり合ってぶつかり合って、大勢が死んで、泣いて笑って、こじれにこじれた話の末は、劉禅さまが酒と女でぶちこわす。そういうことでした。

こういうのってある。軍神・上杉謙信がかっこいい、家臣として家と義を守る直江兼続も素敵な侍。でも歴史を重ねた上杉家の末裔は、あの吉良上野介とそのバカ息子(芝居的に)であると。

世の中は、数十年単位でバランスがとれているのかもしれません。