PS3の価格はちょうどいい?

お仲間の「SATの日記」にてPS3が高いとの話が出ておりました。

PS3発表……ゲーム機の内容を語る以前に高いよ……
http://d.hatena.ne.jp/satoshi05/20060509#p1

以下が元ネタとなっている。

SCEI、「プレイステーション 3」11月11日発売
価格は62,790円!! コントローラも発表
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20060509/scej.htm

価格を見ると確かに高い。従来に比べると圧倒的だしDVD/HDDレコーダが安くなってきているのに、その逆を行く状況。まぁ今回は新メディアをサポートしているわけで、ドライブの部分は安くなるはずもないのだが。

これに対し、あくまでポーズかもしれないが、メーカーは「安すぎたかも」と吹いているようだ。

やっとすべてを発表できた――SCE久夛良木健氏プレスイベント直後インタビュー
http://plusd.itmedia.co.jp/games/articles/0605/09/news046.html

個人的には高いと感じるのではじめは買わないが、いずれ普及して安くなったときには買う可能性がある。

と、まぁ個人の話はともかく。

一般としての受け止め方はやはり“高い”になると思う。しかし今回の価格設定は、メーカーとしては適正もしくは安すぎる、という意見には賛同できる。以下、インタビューの一部からの引用だが………。

プレイステーション(PS)の価格を発表した時も高いと言われました。プレイステーション 2PS2)のときもそう。しかし、いざ発売されると、どちらもそれまでのゲーム機では考えられないような売れ行きを示しました。それは、どちらもそれ以前のゲーム機では味わえない体験ができたからです。PS3でも、次世代のグラフィックや、ネットワークを介したさまざまなサービスなど、これまでには体験できなかった次世代のゲーム体験ができるようになっています。そして、PSやPS2のように、ゲームの好きの人なら間違いなく買ってくれると思っています。

一応確認になるが、PSもPS2も、途中で価格を引き下げたという事実がある。値下げに踏み切ったのは、初期投資を回収し(もしくは回収できるめどが立ち)、今後も製造販売コストに対する利益を確保できると判断したためで、PSシリーズの場合は初期の価格設定で十分売れたために値下げに踏み切った、と捉えることができる。

話を戻す。価格として適正であるかという話だが、私はソニーにとっては適正であると思う。思うに、ソニーはこれ以上大型ゲーム機のシェアを拡大するつもりがないのではなかろうか。

私はPS3について、2までと比べて消費者の買い控えは免れえないと予想しているが、多少のシェア低下はソニーにとって問題がないと考えている。

つまり、以下のような思考の流れがあるのではなかろうか。

PSの固定ファン(もしくはコンシューマゲーム機のファン)は十分ついた。だから価格を引き上げても特定層には売れる。それだけで初期投資を回収することができる。しかしながら、価格を安く設定しても、シェアの拡大は頭打ちになるだろう。ここから先の開拓は、頭の硬いおじさん以上、もしくはゲームを知らない幼児が相手となる。安く設定しても爆発的にシェアが伸びる見込みがないのであれば、確実に売れる層をターゲットの中心に据える。ファンなら、これまでと比べて高くても買う。

このように考えて、これまで確保した中学生〜三十代のファン層から(悪い言い方になるが)できるだけ多くの利益をむさぼろうとしているのではなかろうか。三十代は、これから子供がゲームを楽しむ年齢に育っていく世代である。子供に与えるおもちゃとして、親子で楽しむ目的で購入する世代になるのだ。もちろん子育てには金がかかるから、富裕層が主にPS3を購入する。一方で、ひとたびゲームから離れた三十代以上は、仮に一台一万円と言われたとしても、子供にゲーム機を与えることをためらうだろう。団塊世代と同じである。

私がこのように予想した主な理由は、上記の引用部にある。

ゲーム機は生活必需品でもないのに、高価なPS2を購入する消費者が多かった。ゲームに関する娯楽、および庶民共通の話題を求める人が多かったことの証明にはなっている。

PSとPS2を、発売と同時に入手しようと動いた人であれば、PS3も同じように求めるだろう。その数はこれまでほどではないにせよ相当数に上るはずで、メーカーとしては十分採算がとれる、と。

一方で、私のように、PS2の時点で高いと感じて買い控えた人間は間違いなくPS3も買わない。この価格帯と機能では、新たなユーザーを獲得することはできないものと考える。しかし、ソニーにとってその必要はないのだ。ソニーPS2を持たない私に、PS3を売りつけようとははじめから思っていないわけだ。

同じく高価なゲーム機としてXBox(360)があったが、地盤の規模が違う。XBoxの場合はまっさらな状態からユーザーを掘り起こさなければならなかったが、PS3の場合は互換性を維持するだけでもPS2と同程度の価値が生まれる。そこに付加価値を乗せるのであれば、価値は相対的に高くなるだろう。

だからソニーとしては、高価だと感じてもらう程度がちょうどいい。既存のファンの多くが切り替えというスタンスで買ってくれるからだ。

価格は、下げることはできても上げることは難しいので、これらのことをふまえると初期の価格設定で六万という数値は無謀ではないと考える。

他に、現状は対抗馬が見いだせない、という理由もある。

Wii?私のように既存のハードを欲しいと感じない人の大部分は、Wiiにも興味を示さないのではなかろうか。そして、任天堂のゲーム機を持っている人は、同時にソニーのハードも持っている場合が多いだろう。ソニーにとって、現状以上のゲーマー開拓は難しい。それほど普及させたソニーだからこそ、余裕をかましていられるのかな、と。

それと、大型のゲーム機は価格があまり影響せず、キラーゲーム次第という側面を持っている点にも安心感が見いだせる。ファイナルファンタジーPS3向けに発売される以上、それだけで日本に二百万のユーザー確保が約束されたと私は見ている。

FFがPS3向けに出るというのは、以下の記事からの情報。

スクウェア・エニックスWiiで「ドラゴンクエスト」シリーズ最新作を投入
PS3で「FINAL FANTASY XIII」そして「FINAL FANTASY Versus XIIIhttp://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20060509/sqex.htm

メーカーにとって、ユーザー数の増加は必ずしも重要ではない。投資を回収し利益を上げられるかが問題なのだ。

そして、あらためて、大幅な価格上昇がおもてだって現れた原因は、引用のインタビューにもある通り、消費者がPSというハードを求め続けた結果、という点はふまえておきたい。価格を抑えて欲しいのであれば、私のように買わない選択をするというのも一つの道である。