ウィザードリィのキャラクタロストの弊害

ウィザードリィは、高難易度ゲームとか死にゲーとか運ゲーの代名詞として使われることがあるくらいシビアなゲームになっている。

けれども、一つ思うのだ。ウィザードリィというゲームにもしキャラクタの「ロスト」(死んだ後、復活に失敗したキャラクタが永久に失われてしまう)の概念がなければ、随分と違う印象を持つことができただろうなと。

キャラロストについて私は、「プレイヤーの期待と努力に背く」ルールだと考えている。ロストはセーブデータを破壊する行為となんら変わらない、が持論だ。しかし、問題はそれだけではない。ロストの概念は、ウィザードリィ自身の良さをも削いでしまう真に自虐的なルールではないかと思う。

ロストはウィザードリィの難易度を下げるルール

ロストの概念があるために、ウィザードリィは、神の指(リセットスイッチ)によってパーティの全滅を防がざるをえないゲームになってしまっている。パーティが全滅すればキャラロストのリスクが高まる。キャラクタを失う恐怖が頭をよぎれば安易にリセットに走る人が増えるのはやむなきこと。

全滅をリセットスイッチで防ぐのは簡単だから、みんなポンポンリセットを押す。その結果、プレイヤーは全滅後の世界を目にしない。

全滅後の世界がないということは、進行上は「ファイナルファンタジー」シリーズとなんら変わらないゲームになってしまう。「ファイナルファンタジー」シリーズにおけるパーティの全滅はゲームオーバーなので、全滅後の世界はないのだ。

ここが勿体ないと思えるポイントだ。

実はウィザードリィは、「ロスト」の概念があるために、「ドラゴンクエスト」よりもヌルいゲームになってしまっている。「ドラゴンクエスト」は、パーティが全滅すると所持金が半分になる罰則があるが、その程度であれば全滅を受け容れ、ゲームを続行する人が多かった。

高難易度とか死にゲーとかいう呼び名がある割に、ドラクエよりも手軽に進行できてしまうパラドックス。リセット付きでウィズを遊んだ人は、ドラクエプレイヤーよりもヌルいゲーマーなのかもしれません。まぁ私はどちらも遊びましたが。

ロストがなければ、パーティ全滅後の世界を遊べるゲームになっていた

「石の中の全滅」と「ロスト」さえなければ、実はウィザードリィはリセットスイッチを押す頻度の少ないゲームになる可能性を持っていた。ゲームのイメージは「ドラゴンクエスト2」程度にまで丸められて、スパイスのほどよく効いた高難易度のゲームとして記憶に留めたかもしれない。そこでは、「死にゲー」とか「運ゲー」とかいう(やや不名誉ともとれる)呼び名は若干影を潜めることになったはずだ。

なぜかというと、リセットなしで取り組む場合ウィザードリィは全滅の多いゲームだが、同時に「救出パーティを編成する」という、他のゲームには見られない特徴を持っているからだ。パーティが全滅か、全滅に類する被害を被っても、新たなパーティを編成し、ゆっくり時間をかけて回収しに行くことができる。

けれども実際には、救出パーティを編成して全滅した仲間を救いに行くケースは、私の身の回りでは少なかった。多くの場合、救出のことを考える前にリセットをかけて全滅そのものを防いでしまう。

これは実に勿体ないことだ。仲間を救いに行くというシチュエーションそのものが、醍醐味のあるイベントとしての役割を担えるはずだったのに。

あまり救出パーティが編成されなかった理由の一つは、全滅したパーティにおけるキャラクタの「ロスト」や「アイテム喪失」が怖かったためだと私は考えている。キャラクタが死ぬと常にキャラロストの恐れがあったし、迷宮に放置された死体のアイテムは一部が失われる仕様になっている。ロストやアイテム喪失がなければ、「救出」のシチュエーションを楽しんだプレイヤーはぐっと増えたんじゃないかと思う。

いかに素晴らしい概念を持っていたって、運用が成されていないなら「無い」も同じこと。そのあたりから勿体なさを感じる。

クイックロード付きのウィザードリィファイナルファンタジー3よりも低難易度

ちょっと話は逸れるが、エミュレータのクイックロードを前提で考えると、ウィザードリィは「ファイナルファンタジー3」よりも難易度の低いゲームになっている。その理由は、乱数生成のアルゴリズムにある。

ファイナルファンタジー3」の乱数生成ロジックは、簡単に言うと「歩く位置で生成値が決まる」仕掛けになっている。だから、いかにクイックロードを繰り返そうとも、次のマスで強敵が出現する法則を変えることはできない。その戦闘で敵の不意打ちが起きる予定になっていれば、その不意打ちはクイックロードを繰り返しても防げない。

これに対しウィズは、生成する乱数値を現在時間によって決めている(ように見える)。だから、プレイヤーがパーティの全滅に遭遇したとき、すぐにクイックロードを行えば、扉を開けたときに出会うモンスターを変更することができる。

ファイナルファンタジー3」はちょっと操作ミスをすると全滅の回避をするのに工夫を要する。しかし、ウィザードリィでは、たとえクイックロード後が戦闘中であっても、敵の攻撃パターンが変化する可能性があるため、全滅を回避しやすい。

ウィザードリィは難易度を極端に限定してしまう

ドラゴンクエスト2」や「ファイナルファンタジー3」はなかなかシビアなゲームだ。全滅するかしないかのギリギリのところで勝負に出ざるをえないことが多くて、本当にハラハラさせられる。

ウィザードリィは多くの場合、「リセット許可で超低難易度」か「リセット禁止で死にゲー難易度」のどちらかしか選ばない。そういうところなんかを見ても、「ロスト」がいかにウィズの良さを削いでいるかと感じさせられる次第である。


追記2007年12月13日

(「クイックロード付きのウィザードリィファイナルファンタジー3よりも低難易度」の記述に関するはてなブックマークのtemtanさんのコメント)

FF3の「強敵回避不可」はダウト。余裕で回避可能

この部分は、一応フォローします。

FF3の強敵が回避不能というのは、クイックロード後にすぐに次のマスに歩くことで発生する乱数が同じ値になるため、同じモンスターが出現するという意味です。工夫すればモンスターの変更が可能です。その工夫に相当する行為が、「余裕」であるか否かは基準を定めていないので決められませんが、ウィザードリィよりは面倒だと私は感じました。

コメントにある通り、FF3はクイックロードによって(ウィザードリィほど手軽ではないにせよ)、モンスターの選びわけをすることが可能になっています。この部分がウィザードリィの場合は、ほぼ何も考えずに選びわけが可能になっています。

ウィザードリィの場合は、むしろ同じモンスターを出現させることが難しくなっています。以前より厳しい状況が生まれることもあります。プレイヤーにとって厳しい状況下でクイックロードを行うことを想定すると、クイックロード前よりは楽な状況が生まれることが期待できるということですね)


それにしても5ブックマーク達成とは!また田舎サイトの新記録更新。みなさまコメントありがとうございます。