ゲームブック風テキスト・バッドエンドの三点リーダ
ときに、ゲームブックの印象に大きく影響するのが、バッドエンドの書き方だ。
ゲームブックというとバッドエンド。死を見るときにこそ、その本領を発揮する世界である。『世界樹の迷宮』ではアドベンチャーパートにおけるバッドエンドがないため、そのあたりを見ることはできない。
三点リーダで終わる
FFシリーズの訳は、「君の冒険はこれまでだ。」とか「君は任務に失敗した。」といった単刀直入な終わり方をする印象がある。もし『世界樹の迷宮』のアドベンチャーパートにバッドエンドが存在したら、そういう書き方になっていたに違いない。
このバッドエンドの書き方も、FFシリーズと、東京創元社の著名シリーズでは異なり、個人の印象としては圧倒的に後者(ソーサリーなど)の方が強い。
その最たるものが三点リーダ「…」の使い方だ。パラグラフの最後に「……」が来るとバッドエンド、というのが一部の著名ゲームブックではお約束だった(例外もあった)。
例
以下のような感じ(最後がポイント)。
一〇二
たいした武装はないと踏んだあなたは剣のつかに手を掛け、女に斬りかかろうとする。女は、巧みに身をよじらせて最初の攻撃をかわすと、手に持っていた短いステッキをひと振りした。
「わらわの機嫌を損ねるとは……愚かものめ!」
たちまちあなたは、小汚いヒキガエルに姿を変えられてしまう。冷たい笑みを浮かべる女の顔が間近に迫り、その禍々しいほどに長くグロテスクな舌が、茶色いあなたの身を絡め取ろうと先を伸ばす。その長い舌は、まるで蛇のごとくしなり、あなたの身を縛り上げる。
死の直前にあなたの目に焼き付いた光景は、どどめ色に染まり艶やかにとろける女の喉だった………
これに対しFFシリーズだと「君の冒険はこれまでだ。」で終わるのと、バッドエンド自体がもう少しあっさりしていることが多くて、印象に残りづらい。