二刀流あれこれ

以前どこかで二刀流について少しコメントしたことがあります。

剣と魔法のファンタジー物語の世界、とりわけコンピュータRPGでは、二刀流を好きなファンが多いみたいで。私も昔はよくやった。右手に長い靴べら、左手に傘を持って、近所の男の子とチャンバラごっこをしていた頃を思い出す。

二刀流という言葉を使うゆえんはきっと、大多数が宮本武蔵にあるのだと思う。最近はテレビでもあまり見ないが、小中学生の男の子は剣とか格闘とかが大好きだから、歴史物の本を読むとき、宮本武蔵を手に取る機会が多いのだと思う。

そこへきて二刀流の開眼、いわゆる「二天一流」が、武芸者としての彼を象徴するかのごとく伝わっているものだから、日本男児としてそれをゲームに使いたがる気持ちは分からないでもない。二本をいっぺんに使うなんてかっけえ!という感じだろうか。

実は現代でも、剣道の公式戦で二刀流が認められているらしい。中には二刀流を伝統的に受け継ぐ剣道場も存在し、実際に二刀流で挑み、大会でいいところまでいった例があると新聞で読んだことがある。

(二刀流で試合をするとたいがい弱くなってしまうので、ほとんどの人が一本で訓練し、一本で戦うことにしているそうだ)

思ったこと

二刀流を好きな人には申し訳ないが、私はこう思う。

二刀流は「宮本武蔵やそれを受け継ぐ末裔が、二本の日本刀を構えると様になる」ことに価値があるのであって、実戦ではじめから使う必要はないだろうと。

RPGの人物は「冒険者」の体裁をとっていることが多いのだから、逆腕には盾を据え付けるか、フリーハンドにして不測の事態に備えられるようにしておくのがいい。

あえてゲームに二刀流を取り入れるなら、こういうのはどうだろう。

ゲーム的に実装する場合

二本構えたとき、単純に武器の攻撃力を足し合わせるなんて理に添わないし面白くない(分かりやすいけど)。

ゲーム的にはこういうのはどうだろう。二刀流対応の「様になる」剣で構えたとき。

  • 特殊なオーラを放って一部の敵を威嚇する(その価値が分かる相手だけ)
  • 魅力がアップする
  • 敵の攻撃を受け流しやすくなる(棒状の武器による殴・斬撃のみ)
  • ほんのたまに二回攻撃が発生する

トータル戦力的には低下するとしても、ロマンある戦術を組み立てられるようにした方がファンのためではなかろうか。

この機能は、きちんと二刀流対応の武器を対で装備していることが前提だ。両手にメイスを持って二刀流が機能したらロマンが失われてしまう。

剣士は足し算が目的で二刀流を求めるのか?「二天一流」とは単なる足し算のことだったのか?そのあたりを踏まえれば、もう少しそれらしいアイデアがでるんじゃないかと。

西洋的な使い方

主力武器は「中世西洋のロングソードもしくはそれ風」の剣であることが多いので、それを逆腕に持つカタチはいまいちインパクトがない。

西洋剣は日本刀とはちょいと違って、肉と骨をぶっ潰すために振り下ろす重量重視の武器であるはずだ。彼らの思想を継承するなら、二本のロングソードではなく一本のグレートソードがいい。

もし西洋スタイルで逆腕に武器を持つなら、せめて短めの剣(マン・ゴーシュ等)にして防御に使った方がよほど実践的だし、洋風としては様になる。その場合でも利き腕はロングソードより、レイピアの方がかっこいいと思う。

……んん、でも敵がウォーハンマーを振り回してきたら勝てないか。先手必勝で敵の腹を貫いてください。プレートを着たドワーフが相手の時はどうなるか知りません。

腕の数

どこかのマンガに出てきた目が三つ・腕が四本の武道家のことじゃないけれど、私は四本腕で襲いかかってくるモンスターが好きです。タコの怪物が八本の足で襲ってくるのも好き。

イカの怪物の十本は……いまいちかなあ。足や腕の数は2の整数乗がいい。

虚を突く「一本腕のモンスター」がいてもイイね。2の0乗は1。

二刀流に限らぬシステムの問題

Aで攻撃されたらBで返し、Bで攻撃されたらCで返し、Cで攻撃されたらAで返すのが戦闘であると思う。

二刀流で攻めれば敵は二刀流破りで反撃してくるわけで、そうなればあっさり二刀流を捨てて別の武器や戦術に切り替えるのが優秀ないくさ人ではないか。

特定の武器や戦術に固執するのがいちばん戦闘員らしくない気がするので、武士にせよ傭兵にせよ騎士にせよ兵士にせよ、そういう切り替えを実現できる柔らかいシステムが一番必要なのかも。

必要になれば騎士だって二刀流はするに違いない。二刀に習熟してない問題はともかく。

戦術や武器の事情まで創造してみる

歴史的に見て西洋の戦闘員は敵を殺すより、戦闘能力を奪い人質に取ることを重視したようなので、日本の侍と違って、刺すより骨折させることを選んだのかもしれない。ひたすら殺すのが目的なら、それらしい武器と戦術を選ぶはず。

刀の鍛錬技術において日本が優れているのは、日本人が殺傷を強く求める民族だから、なのかもしれない。おそらくファンタジーの世界における日本人の職人たちは、「対モンスター用のもの凄い武器」を編み出したはずで、それは槍や刀とは限らない。たぶん武士の標準武装スタイルが、我々の知るものとは異なるはず。

リアルな歴史を元に武器や防具を作るより、そういったバックにある進化の歴史まで創造して、新たな騎士像・武士像・傭兵像を編み出すのも、ゲームの作り方としては面白いかもしれない。そういうのは昔ながらのファンタジー小説でもあまりみられなかった。

「なぜ鉄より固いウロコを持つというドラゴンに、対人用の武器であるバリスタやグレートソードを使うのか?」と疑問を持ちながら、専用の武器をデザインしていけば、わざわざ「ドラゴンスレイヤー」なる世界のどこにあるか分からない武器に頼る必要がなくなるかもしれない。